現場から見たプログラミング教育〜スクラッチはやっぱり王道のプログラミング教育ツール〜前編
現場から見て、使いやすいプログラミング教育ツールのベスト3は、
① ビスケット
② MESH
③ スクラッチ(プログル)
でしょうか。
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ここで「現場で使いやすい」ということをちょっと説明します。
まず、皆さんは、現場の先生、今回はプログラミングの話なので、小学校の先生がどれほど忙しいか、をご存知かと思います。
もちろん、他の職業も激務なので、学校の先生だけ特別忙しい、ということを言いたいわけではないのですが、
客観的に見て、また、事実として見て、分刻みで先生は動いています。
言いたいのは、分刻みで動いている先生が、プログラミング教育をやるにあたって、難しい準備が必要な教材は、「現場から見て使いやすい」教材ではない、ということです。
ですから、翻って、「現場から見て使いやすい」教材というのは、「さっと使える」「簡単に使える」教材なのです。
そうした観点でいえば、上記の3つが、まあ、及第点なのかな、と思うのです。
ということで、本記事では、その中のひとつ、スクラッチに焦点を当てて説明します。
① 5年生算数のなかでスクラッチ(プログル)を使う方法
② 総合的な学習の時間でスクラッチを使う方法
① 5年生算数のなかでスクラッチ(プログル)を使う方法
5年生の算数「正多角形と円をくわしく調べよう」の単元は、いわばプログラミング教育の王道といってもいいでしょう。
というのも、この単元は学習指導要領にも例として載っている、いわゆる分類Aにあたるからです。
ですので、この単元の事例は、ネットにもけっこう出ていて、そういう意味でも、「使い勝手がいい」単元です。
ということで、指導案を載せたいと思います。
指導案 第5学年 算数科学習指導案(正多角形と円をくわしく調べよう)
1. 単元名
多角形と円をくわしく調べよう[正多角形と円周の長さ]
2. 配当時数
9時間
3. 活動時期
2月
4. 単元の目標
観察や構成を通して、正多角形の意味や性質について理解をするとともに、正多角形の作図をしたり、性質を調べたりすることができる。円周の長さに対する直径の長さの割合を考えることを通して、円周率の意味や直径、円周、円周率の関係について理解し、それを用いることができる。
5. 単元や題材などの学習内容
本単元では、正多角形の正五角形、正六角形、正八角形のかき方を考えることを通して、それぞれの正多角形の性質を学習し、中心角や周りの角の角度について目を向けさせていく。
また、円を使って正多角形がかけることや、正多角形の角の数が増えると円に近付くことから円周の長さに着目させ、円周率について理解させていく。
児童はこれまでに第3学年において円の定義やかき方、半径と直径との関係について学習してきている。
また、第5学年の「図形の角」の単元において三角形の内角の和が180°であることを理解し、そのことをもとに四角形、五角形、六角形などの内角の和について演繹的に考え、求めている。
このような既習事項を想起しながら、円と正多角形を相互に関連付け、定義や性質についての理解を深めていく。
その学習活動を通して、根拠を明らかにし筋道立てて考える数学的な思考力を育てていきたい。
6. 単元計画
目 標 | 時 数 | 評 価 |
(1)正多角形 | ||
「正多角形」の意味や性質を理解する。 | 1 | 知・技❶ 態 度❶ |
円と関連させて正多角形の性質の理解を深め、円の中心の周りの角を等分して正多角形をかく方法を理解する。(コアカリキュラム) | 1 | 知・技❷ 思・判・表❶ |
図形の構成要素に着目して、円を使って正六角形がかける理由を考え、説明することができる。(コアカリキュラム) | 1 | 思・判・表❷ 態 度❷ |
(2)円のまわりの長さ | ||
「円周」について知り、正多角形の性質に着目して、円周は直径の3倍以上4倍以下であることを考え、説明することができる。 | 1 | 思・判・表❸ 態 度❸ |
円の形をしたいろいろなものの直径と円周の長さの関係を調べることができる。 | 1 | 知・技❸ 思・判・表❹ |
円周率の意味や求め方を理解し、円周の長さを求めることができる。 | 1 | |
円の直径の長さと円周の長さの関係に着目して、円周の長さは直径の長さに比例していることを表を使って見出し、説明することができる。 | 1 | 知・技❹ 思・判・表❺ |
まとめ | 1 |
コアカリキュラム(正多角形と円をくわしく調べよう内配当2時間)1/2 プログルを使って
コアカリキュラムとは、プログラミング教育において、1年間を通して、これだけは必ずやりましょうという単元です。
また、この単元では、使用教材はプログルとスクラッチとしました。プログルは「特定非営利活動法人みんなのコード」が開発した教材です。プレスクラッチ、という操作感で、ゲーム感覚もあり、スクラッチへの橋渡しとして最適では、という意図で採用しました。
プログルに慣れたところで、いよいよスクラッチを使用します。
プログラミング教育といえばスクラッチ、というぐらい、世界中で使用されているビジュアル教材です。今回は、同じ内容をプログルとスクラッチで反復する単元構成になっていますが、スクラッチに慣れる、という意図があります。
目標
正多角形をかくプログラムづくりを通して、正多角形をかくときのきまりを考えることができる。
1時間目の活動
『プログル』を使って、正多角形をかくときのきまりを考える。
2時間目の活動
『スクラッチ』を使って、正多角形をかくときのきまりを考える。
◎ 教科の学習とプログラミング教育の関連
Web上のプログラミング教材「プログル」及び「スクラッチ」を利用し、「数学的な見方・考え方」と「プログラミング的思考」とを関連付けて育成するための学習活動に取り組む。
コンピュータに意図したとおりの正多角形をかかせるプログラムを考えることで、正多角形についてのきまりを見つけさせたり、考えた方法がどんな正多角形でも当てはまるのか試行させたりする。いくつかの数量の関係から共通性を見出し規則として一般化するという数学的思考と、意図した動きを記号の組み合わせで実現するプログラミング的思考を働かせて、図形の性質についてより深く考えさせていく。
また、この活動を通して児童は、手でかくことが困難な図形もコンピュータを使うと正確にかけることに気付き、コンピュータを問題解決に活用することのよさも感じとっていくことであろう。
◎ 展 開(1/2校時)
分 | 学習活動 | 指導上の留意点 |
5 | 既習事項を確認する。 ・多角形の内角の和について学習したことを想起する。 ■ 課題をつかむ
| 三角形の内角の和が180°であることをもとにすることを確認する。
|
20
| プログルの基本操作を知る。 ・ブロックのつなげ方、外し方、消し方、実行やリセットのしかたを知る。 ■正方形のかき方を考える。 ・辺の数が四本、1つの角が90°をもとにして考える。
■正三角形のかき方を考える。 ・一つの角の大きさを求める。 ・辺の数3本、一つの角60°をもとにして考える。 ・うまくいかない場合、どこを変えればよいか考える。 ・必要な数値を変えてやり直す。 |
ステージ5(正三角形)までは教師の操作により学級全体で考えるようにする。 繰り返しブロックの使い方を確認する。
|
30 | ■正六角形のかき方を考える。 ・正三角形でうまくいかなかったことをもとに考える。 ■正五角形のかき方を考える。 ・これまでの結果を表にまとめ、きまりを考える。 ・きまりをもとにして、正五角形がかけるプログラムを考える。 | 「60°回す」ではうまくいかないことを確認する。 外角の大きさを考えるとうまくかけることに動作化などで気付かせる。 繰り返す数×回す角度が360°になることを確認する。 |
40 | ■いろいろな正多角形のかき方を考える。 ・自分で考えた正多角形をかくプログラムを考える。 ・できた多角形とプログラムを発表する。 ・回す角度の規則性について考える。 | 回す角度には規則性があること、つまり、360°÷ 辺の数で求められることに気付かせる。 |
<評 価> ・正多角形をかくプログラムを考えることを通して正多角形をかく時のきまりを考えることができたか。(知識・技能)(観察・作成プログラム) ・試行錯誤しながらも自分の考えをプログラムで表現しようとしているか。(主体的に学習に取り組む態度)(観察・作成プログラム) | ||
■ふり返りをする。 (算数科に関するふり返りの視点) 「正多角形をかくときのきまりについて理解したこと」 (プログラミング教育に関するふり返りの視点) 「プログラミングをしてみて感じたことや考えたこと、もっとやってみたいこと」 |
プログルについて
まず、プログルの使い方を説明します。
① 最初に検索して、プログルのサイトに行きます。
② 続いて、「プログル教材」のなかの、「算数」・「多角形コース」に行きます。
③ このあとは、指示に従って、ゲーム感覚でやっていけばオッケーです。
④ ただ、ステージ5からは、数字を変える必要があります。
ステージ5の課題は、「線にそって1辺が100の正三角形を描いてみよう!」です。
ここでは、「4回くりかえす」を「3回くりかえす」に変え、なかの角度を、もともとの90°を、内角(60°)ではなく、外角(キャラクターが実際に回る角度=120°)にしないとうまく行きません。
さらに、すると、回す角度は、360°÷ 辺の数、で求められることに気付かせます。
ということで、この時間はおしまいです。
ちょっと長くなったので、後編は別記事にしたいと思います。
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